国際運送に関する保険の知識

現在、日本で使われている貨物海上保険証券のフォームには2種類ある。MARフォームが主流。

 

(1) MARフォーム(Marine Form)

(2) S.G.フォーム (ロイズS.G.フォーム)

(1) MARフォーム

SGフォームが古く英語も判りにくいため、ICC Institute Cargo Clause 1982年でMARフォームが登場。

コンテナリゼーションの進展による国際複合輸送に対応。

ICC2009年版改訂MARフォームで、我が国もMARフォームが主流に。MARはMarineのこと。

・L/C要求→Institute Cargo Clause(A)なのに Policy→All Risk はディスクレ

・L/C要求→All Riskなのに PolicyがICC(A)はL/C条件充足(ISBP186条)

海上危険に対応する約款 (Insstitute Cargo Clauses) として3種類あり、必要に応じて選択する。

このうちICC(A)はすべての危険を包括的にカバーするもので、航空輸送バージョンとしてICC(AIR)がある。

  ICC(A) ICC(B) ICC(C)
火災・爆発
座礁、沈没
陸上輸送用具の転覆、脱線
輸送用具の衝突
船舶その他輸送用具の水以外の他物との衝突、接触
避難港における貨物の荷おろし
地震、噴火、落雷
悪意による沈没
共同海損
積込み、荷おろし中の貨物の落下による梱包1個ごとの全損 X

波さらい (Washing Overboard)

海水の船舶、コンテナ、保管場所への侵入

汗ぬれ、蒸れ(Sweat and Heating)

X(要特約)

雨ぬれ、淡水濡れ

(RFWD:Rain Fresh Water Damage)

X(要特約)
擦損、かぎ損(Hook Damage) X(要特約)
虫食い、ねずみ食い X(要特約)
盗難(Theft and Pilferage) X(要特約) X(要特約)
破損、曲がり、へこみ (Breakage, Bending, Denting) X(要特約) X(要特約)
漏出(Leakage)、不足 X(要特約) X(要特約)
汚染(Contamination)、混合 X(要特約) X(要特約)

さび、酸化(Rust and Oxidization)

X(要特約)
腐敗(Decay) X(要特約)
不着(Non Delivery) X(要特約)
戦争危険、ストライキ危険 X(要SRCC) X(要SRCC) X(要SRCC)
被保険者の故意の違法行為 X X X
梱包の不完全、不適切 X X X
保険の目的物の固有の欠陥、性質 X X X
遅延 X X X
核兵器の使用 X X X
船舶不堪航、コンテナ不適合
向いている貨物

機械、

一般貨物

穀物など

鉄鉱石、

鉄くず

石炭など

特約:War + SRCC (Strike, Riot,Civil Commotion)

海賊:ICC(A)ではマリンリスクに含まれている。旧約款、ICC(B) ICC(C)は戦争特約でカバー

(2) S.G.フォーム (ロイズS.G.フォーム)

1963年版ICC約款

S.G.フォームには代表的な3つの保険条件があり、必要に応じて選択する。

①FPA [分損不担保]条件 Free from Particular Average

・単独海損はカバーされない。

・共同海損による損害 →カバーされる。 

・SSBC(沈没Sink、座礁Strand、大火災Burning、衝突Collision)やPerils of the seas(沈没、衝突、座礁などの他、低気圧などによる暴風雨、高波など)による分損→カバーされる。 

・SSBC(沈没、座礁、大火災、衝突)による全損→カバーされる。 

・積込、積替、荷卸中の貨物墜落による梱包一個ごとの全損→カバーされる。 

・避難港での荷卸の際に生じた損害→カバーされる。 

・救助料、損害防止費用、特別費用→カバーされる。 

 ! 潮濡れによる分損はFPAではカバーされない。

 ! 雨ぬれはカバーされない。

FPAでは、海上輸送の中心的な事故である潮濡れ(Sea Water Damage)のリスクがない原油、石炭、鉄鉱石、木材、大理石といった鉱業品、バラ積建材の場合を中心に利用。

*盗難、不着、破曲損、雨淡水濡れ、汚れ、その他:特約で付保。

 

②WA条件(With Particular Average 単独海損担保、分損担保)

WA[分損担保] With(Particular)Average

WA条件でカバーされる損害

1. 共同海損による損害

2. 全損:SSBC(沈没、座礁、大火災、衝突)やPerils of the seas(沈没、衝突、座礁などの他、低気圧などによる暴風雨、高波など)による全損。

3. SSBC(沈没、座礁、大火災、衝突)による分損。 

4. 積込、積替、荷卸中の貨物墜落による梱包一個ごとの全損。

(*以上の段階では潮濡れによる分損はまだカバーされていない) 

5. 担保危険による上記以外の分損→ここで、その実質的な内容である潮濡れリスクがカバーされる。潮濡れリスクの高いバルク積み小麦や大豆などの農産品を中心に利用されている。

6. 避難港での荷卸の際に生じた損害

7. 救助料、損害防止費用、特別費用

*保険条件を単にWAとして契約すると、保険証券本文に書いてある免責歩合条項(メモランダム条項)が適用されて「フランチャイズ方式」が適用される。(海難によるものか、貨物の性質によるものか、保険価格の3% 5%などの判断が困難なため)→そこで、通常は証券上にWA(I.O.P : Irrespective of Percentage)と表示してメモランダム条項を適用しないようにする。

雨ぬれはカバーされない。

*盗難、不着、破曲損、雨淡水濡れ、汚れ、その他:特約で付保。

 

③ALL RISKS条件(全危険担保)免責歩合なく、損害全額てん補。

・共同海損による損害

・全損:SSBC(沈没、座礁、大火災、衝突)やPerils of the seas(沈没、衝突、座礁などの他、低気圧などによる暴風雨、高波など)による全損。

・SSBC(沈没、座礁、大火災、衝突)による分損。

・積込、積替、荷卸中の貨物墜落による梱包一個ごとの全損。

(*以上の段階では潮濡れによる分損はまだカバーされていない)

・担保危険による上記以外の分損→ここで、その実質的な内容である潮濡れリスクがカバーされる。

・避難港での荷卸の際に生じた損害

・救助料、損害防止費用、特別費用

・盗難、不着、破曲損、雨淡水濡れ、汚れ、その他もカバーされる。

・保険証券の本文約款では被保険者の故意(不法行為)、 戦争、ストライキ、暴動は担保されている。それを後に追加されたイタリック約款で免責にしてある。→さらに特約として、Institute War Clausesにより戦争危険, Institute Strikes Riots and Civil Commotions Clause (SRCC) にてストライキ危険を追加担保する。

! 原子力危険、放射能汚染による損害などはカバーされない。

(20160307)