海外進出

「貿易」といえば、一般には日本で作った「製品」を海外に「輸出」すること、または海外から「輸入」することだった。

しかし、低コストな海外の人件費を求めた海外生産、日本の少子高齢化・人口減少時代を見据えた海外市場開拓のための現地生産・現地販売、国内取引先の海外進出にともなう自社の海外工場新設等、生産拠点を海外に設ける動き、さらには「製品」だけでなく"日本のおもてなし文化"を差別化要因として「サービス業の海外事業展開」など、単に「貿易」という切り口だけでは括ることのできない多様な海外進出の形態がみられるようになってきた。

 

海外直接投資(FDI)の主な目的

(1) 製造コストの低減

(2) 販路拡大のための販売拠点、製造拠点の設立

(3) 納入先からの要請

独資進出のメリット

(1) 自社の企業文化、社内制度を海外にも直接展開できる。

(2) 意思決定が行いやすい。

 

EPRGモデル (Heenan and Perlmutter)

(1) 本国志向型 (Ethnocentric)

意思決定は本国で行い、現地子会社には裁量権を与えず、本国から指導する。

(2) 現地志向型 (Polycentric)

重要事項は本国で決めるが、ルーティンは現地に権限委譲する。

(3) 地域志向型 (Regiocentric)

米州部、アジア太平洋州部、中国部、中東・アフリカ部、欧州部といった地域単位での意思決定を行う。

(4) 世界志向型 (Geocentric)

本国の本社と進出先の現地企業とでグローバルに経営資源を共有する理想的な形態。

合弁形態

1. メリット

・合弁相手の販路、人脈、進出国での影響力、人材、設備、ノウハウを利用することができる。

・投資額が単独進出に比べて少なくて済む。

・リスクが軽減される。

2. デメリット

・経営権を巡って争いが起きかねない。

・利益の使途(投資か、配当か)を巡って争いが起きかねない。

・技術移転を巡って、争いが起きかねない。

3. 留意点

(1)  進出先国では、合弁会社の設立について、例えば外資の出資は50%未満が求められるなど、

      現地の法律上の規制がありうる。

(2)  経営権(出資比率と取締役をどちらがどのくらい出すか) の確保が重要。

(3)  合弁契約書の主な留意点

  ・ 資本金、日本側と現地パートナー企業の出資額と出資比率

  ・ 役員構成

  ・ 株式譲渡制限

  ・ 合弁相手の同意が必要な重要事項

  ・ 合弁契約の終了にともなう関連契約の処理

 

親子ローン

日本の親会社が海外子会社、海外支店に資金を貸し付ける事。

1. メリット

・自社内の処理であり、手続きが比較的容易。

・貸付条件、金利は自社内で取り決めることができる。

・海外子会社にあっては、支払い利息が損金計上できる。

2. デメリット

・日本側本社あるいは海外子会社に、為替リスクが発生する。一般に為替リスクは体力のある親会社が負担する傾向がある。

・元金返済、利息支払い時に送金手数料が発生。利息を安く設定すると、親会社が受け取る支払い利息に、日本の税務当局から価格移転税制が適用される場合もある。

・貸付が多くなると、進出先企業での支払い利息が増え、費用計上により現地で支払う法人税が減る。そのため現地税務当局から過小資本税制の適用を受ける場合がある。

 

 Standby L/C (スタンドバイ L/C)

1. 貿易取引の決済手段として利用する場合

→輸出決済の項を参照

 

2. 海外進出先子会社が現地の銀行から資金借り入れを行う場合、日本の銀行から債務保証を受けるために発行してもらう。

(1) 手続き

①国内親会社が国内取引銀行にスタンドバイL/C発行を依頼する。

②国内取引銀行がスタンドバイL/Cを発行し、現地金融機関が行う、日本企業の海外進出先への融資を債務保証する。

③現地の金融機関が、現地通貨で、海外進出先子会社に融資する。

(2) メリット

・現地通貨による融資なので、為替リスクを回避できる。

・現地金融機関とのパイプができる。

(3) デメリット

・現地銀行の与信審査を受ける手間、時間がかかる。

・海外子会社に現地利率での支払い利息が発生する。

・日本の親会社は、スタンバイL/Cを発行してもらった邦銀に保証料を支払う必要がある。

(20171119)