国際運送に関する保険の知識

【1】保険の必要性

 1924年 ヘーグ・ルール(船荷証券統一条約)

 1968年 ヘーグ・ウイスビー・ルール (および1979年改正議定書):

 ・船会社は「商業過失(貨物の積込、取扱い、積付け、運送、保管に過失があり損害を与えた)」と「堪航担保(航海中の通常の海上危険に堪えうる堪航能力を備えた船舶を提供すること)」のみ責任を負う。

 ・「航海過失(航行または船舶の取り扱いに対する船長、船員、水先人または運送人の使用人の行為、怠慢、または過失)」を免責としている。

 ・故意、過失によらない船舶火災による損害:免責

 ・天災、戦争、内乱、ストライキ等の不可抗力も免責

 ・梱包の不備等による貨物損害についても免責。

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 例えば航海中に大しけに遭遇して貨物に損傷が生じても、船会社が「不可抗力あるいは航海過失による貨物損傷だ」と主張すれば、荷主や荷受人が、それは「商業過失」として責任を追求するしかない。→到着した荷物が不足しているなどを除いて、船会社に損害賠償請求を求めることは事実上不可能。

 ・仮に船会社の商業過失が認められても、その責任限度額はきわめて低い(1kg 当り2SDR or 1包/単位当り666.67SDRの高いほう~ヘーグ・ヴィスビー・ルール4条5)ため、荷主の損害をカバーすることができない。

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 そこで、海上保険をかける必要がある。海上保険によって、船会社が免責されている航海過失も全額カバーし、さらに運送人に対する求償権留保の手続きをとっておくならば、船会社に対する賠償請求部分を含めて保険会社に保険金請求ができる→運送クレームへの対策として貨物に適した保険条件で保険契約を行うことが必要。(20160307)

【2】現在、日本で使われている英文貨物海上保険証券

(1) S.G.フォーム (ロイズS.G.フォーム)

(2) MARフォーム(Marine Form)

(1) S.G.フォーム (ロイズS.G.フォーム)

1963年版ICC約款

S.G.フォームの代表的な3つの保険条件

①FPA [分損不担保] Free from Particular Average

・単独海損はカバーされない。

・共同海損による損害 →カバーされる。 

・SSBC(沈没Sink、座礁Strand、大火災Burning、衝突Collision)やPerils of the seas(沈没、衝突、座礁などの他、低気圧などによる暴風雨、高波など)による分損→カバーされる。 

・SSBC(沈没、座礁、大火災、衝突)による全損→カバーされる。 

・積込、積替、荷卸中の貨物墜落による梱包一個ごとの全損→カバーされる。 

・避難港での荷卸の際に生じた損害→カバーされる。 

・救助料、損害防止費用、特別費用→カバーされる。 

X 潮濡れによる分損はFPAではカバーされない 

X 雨ぬれはカバーされない。

FPAでは、海上輸送の中心的な事故である潮濡れ(Sea Water Damage)のリスクがない原油、石炭、鉄鉱石、木材、大理石といった鉱業品、バラ積建材の場合を中心に利用。

*盗難、不着、破曲損、雨淡水濡れ、汚れ、その他:特約で付保。

②WA(With Particular Average 単独海損担保、分損担保)

WA[分損担保] With(Particular)Average

WA条件でカバーされる損害

1. 共同海損による損害

2. 全損:SSBC(沈没、座礁、大火災、衝突)やPerils of the seas(沈没、衝突、座礁などの他、低気圧などによる暴風雨、高波など)による全損。

3. SSBC(沈没、座礁、大火災、衝突)による分損。 

4. 積込、積替、荷卸中の貨物墜落による梱包一個ごとの全損。

(*以上の段階では潮濡れによる分損はまだカバーされていない) 

5. 担保危険による上記以外の分損→ここで、その実質的な内容である潮濡れリスクがカバーされる。潮濡れリスクの高いバルク積み小麦や大豆などの農産品を中心に利用されている。

6. 避難港での荷卸の際に生じた損害

7. 救助料、損害防止費用、特別費用

*保険条件を単にWAとして契約すると、保険証券本文に書いてある免責歩合条項(メモランダム条項)が適用されて「フランチャイズ方式」が適用される。(海難によるものか、貨物の性質によるものか、保険価格の3% 5%などの判断が困難なため)→そこで、通常は証券上にWA(I.O.P : Irrespective of Percentage)と表示してメモランダム条項を適用しないようにする。

X 雨ぬれはカバーされない。

*盗難、不着、破曲損、雨淡水濡れ、汚れ、その他:特約で付保。

 

③ALL RISKS(全危険担保)免責歩合なく、損害全額てん補。

・共同海損による損害

・全損:SSBC(沈没、座礁、大火災、衝突)やPerils of the seas(沈没、衝突、座礁などの他、低気圧などによる暴風雨、高波など)による全損。

・SSBC(沈没、座礁、大火災、衝突)による分損。

・積込、積替、荷卸中の貨物墜落による梱包一個ごとの全損。

(*以上の段階では潮濡れによる分損はまだカバーされていない)

・担保危険による上記以外の分損→ここで、その実質的な内容である潮濡れリスクがカバーされる。

・避難港での荷卸の際に生じた損害

・救助料、損害防止費用、特別費用

・盗難、不着、破曲損、雨淡水濡れ、汚れ、その他もカバーされる。

・保険証券の本文約款では被保険者の故意(不法行為)、 戦争、ストライキ、暴動は担保されている。それを後に追加されたイタリック約款で免責にしてある。→さらに特約として、Institute War Clausesにより戦争危険, Institute Strikes Riots and Civil Commotions Clause (SRCC) にてストライキ危険を追加担保する。

X 原子力危険、放射能汚染による損害などはカバーされない。

(20160307)

(2) MARフォーム

SGフォームが古く英語も判りにくいため、ICC Institute Cargo Clause 1982年でMARフォームが登場。

コンテナリゼーションの進展による国際複合輸送に対応。

ICC2009年版改訂MARフォームで、我が国もMARフォームが主流に。

ICC2009年版移行、海上保険はICC2009によるものがほとんどとなった(保険会社の端末でFPA,W/A, A/Rの選択がシステム上できなくなっている。)MARはMarineのこと。

・L/C要求→Institute Cargo Clause(A)なのに Policy→All Risk はディスクレ

・L/C要求→All RiskなのにPolicy→ICC(A)はL/C条件充足(ISBP186条)

  ICC(A) ICC(B) ICC(C)
火災・爆発
座礁、沈没
陸上輸送用具の転覆、脱線
輸送用具の衝突
船舶その他輸送用具の水以外の他物との衝突、接触
避難港における貨物の荷おろし
地震、噴火、落雷
悪意による沈没
共同海損
積込み、荷おろし中の貨物の落下による梱包1個ごとの全損 X

波さらい (Washing Overboard)

海水の船舶、コンテナ、保管場所への侵入

汗ぬれ、蒸れ(Sweat and Heating)

X(要特約)

雨ぬれ、淡水濡れ

(RFWD:Rain Fresh Water Damage)

X(要特約)
擦損、かぎ損(Hook Damage) X(要特約)
虫食い、ねずみ食い X(要特約)
盗難(Theft and Pilferage) X(要特約) X(要特約)
破損、曲がり、へこみ (Breakage, Bending, Denting) X(要特約) X(要特約)
漏出(Leakage)、不足 X(要特約) X(要特約)
汚染(Contamination)、混合 X(要特約) X(要特約)

さび、酸化(Rust and Oxidization)

X(要特約)
腐敗(Decay) X(要特約)
不着(Non Delivery) X(要特約)
戦争危険、ストライキ危険 X(要SRCC) X(要SRCC) X(要SRCC)
被保険者の恋の違法行為 X X X
梱包の不完全、不適切 X X X
保険の目的物の固有の欠陥、性質 X X X
遅延 X X X
核兵器の使用 X X X
船舶不堪航、コンテナ不適合
向いている貨物

機械、

一般貨物

穀物など

鉄鉱石、

鉄くず

石炭など