EAR

EAR (Export Administration Regulations)

 

(1)EARとは

安全保障輸出管理については、日本では外為法1本によって行われている。一方米国では、各省庁が安全保障輸出管理または禁輸出規制に関する法律を定めている。 そのうち、武器にも民生品にも使用できる、いわゆる Dual Use品について定めたのがEARである。

 

もともとは米国の輸出管理法(EAA)が1979年に法制化され、その数度の修正を経た後1994年で失効している。そこで現在は米国の輸出管理を実行するために、大統領が国際緊急経済権限法を行使することにより、輸出管理規則(EAR)を有効なものとして扱うという、変則的な運用となっている。

 

EARは CFR:Code of Federal Regulations(連邦行政規則集)の15分冊「Commerce and Foreign Trade」Title 15: Commerce and Foreign Tradeに収録されている。米国には50のCFRが存在する。他には、例えばその21分冊が「Food and Drug」であり、FDAアメリカ食品医薬品局 (Food and Drug Administration) が受け持っている。

 

(2)なぜ、EARなのか?

日本の外為法:貨物は日本からの輸出時、技術は提供時に適用される。一方、なぜ、米国の輸出管理が日本でも必要になるか。

・EARは米国からの輸出のみならず、輸出された国からの再輸出時にも適用される。

 守らないと輸出禁止、懲役、罰金の処置を受ける。もちろん、米国にいなければこれらの処置は適用されない。

・しかし、EARに違反するとDenied Personに指定される。これに指定されると米国企業のみならず、米国企業と取引をしている米国外の企業とも取引が出来なくなる(米国企業・個人はDenied Personsとの取引が禁止されている。米国以外の企業・個人はEAR規制対象品目のDenied Personsとの取引が禁止されている。)それにもかかわらずDenied Personと取引すると、今度は自分がDenied Personに指定され、米国関連の事業ができなくなってしまう、という間接的な効果がある。

・つまり、米国の再輸出規制は、わが国の輸出者に対しては直接的な法的強制力はないが、米国以外の国から第三国へ再輸出するときに実質的な縛りとなる。

 

(3) EARの規制方法

EARはほとんどすべての品目をその規制対象とし、例外規定 LE (license exception)で規制から外してゆく、というスタンスをとっている。

日本の場合は、規制対象品目を限定して扱っている点で、扱いが異なる。

 

(4) EARの管轄外

EARは米国の商務省以外の官庁が管轄する製品、サービス、技術は規制していない。例えば、

・財務省(Department of Treasury)  海外資産管理局 OFAC(オファック : Office of Foreign Assets Control)は、イラン、キューバ、スーダン等との取引を規制している。・

・国務省国防貿易管理局(DDTC:Directorate of Defense Trade Controls)は、武器輸出管理法(AECA:Arms Export Control Act)、国際武器取引規制(ITARアイター:International Traffic in Arms Regulations)

を管轄。

 

(5) EARの規制対象となる5品目

①米国内にある全ての品目

734.3(a) (1) All items in the United States, including in a U.S. Foreign Trade Zone or moving in transit through the United States from one foreign country to another;

・米国内にある品目は、原則としてすべてEARの規制対象品目となる。原産地を問わない。日本製品でも、米国から輸出される場合はEARの対象となる。

 

②すべての米国原産品目 (貨物、ソフトウエア、技術)

・所在地については国内外を問わない。米国から輸入した米国原産品を日本から第三国に輸出する場合はEARの対象となる。

 

③米国製品組込品

・米国原産品を組込み、米国外で製造された製品「組み込み品」で、デミニミスレベルを超えるもの。

・二重組込

たとえば、米国製品を組込んだ日本製の制御装置を、更に自社の工作機械(made in Japan)に組み込む場合、この工作機械は二重組込となり、EARの対象外。Sep.14, 2009 Advisory opinion <Second incorporation rule>

 

④直接製品 736.2(b)(3)

・米国原産の技術、ソフトウェアを一定の条件(*) で導入し、その技術やソフトウエアに基づいて米国外で直接的に作られた製品。

(*) 一定の条件  技術・ソフトウエアの購入、導入時に確約書を提出し、その技術、ソフトウエアを導入して米国外で作った直接製品がEARに照らして、国家安全保障(NS規制)の対象となる場合で、E:1、E:2、D:1国群向け輸出である場合。

・米国から一定の条件のもとに導入した技術で米国外で作った製品(直接製品)を組込んだ製品を規制するというEARの規定はないので、直接製品を組込んだ場合はEAR対象外。

 

⑤直接製品であるプラントで作られた貨物

・米国原産の技術またはソフトウエアを一定の条件で用いた外国のプラントまたは当該プラントの主要構成部分で作られた製品。

 

(6) EARの主な用語

① Country Group: 国群。EARでは、国群といって、仕向け国をグループ分けして規制の扱いを使い分けている。日本は旧ココム参加国であるA-1グループに分類されている。

D:1国群 中国、ロシア、ベトナム、ミャンマー等主に旧共産圏諸国。

D:5国群 武器禁輸国(E:1テロ支援国の他、キューバ、中国、ベトナム、リビア等25か国。

E:1国群 テロ支援国。イラン、スーダン、シリア、北朝鮮。キューバは除かれた。

E:2国群 米国独自制裁国。キューバは依然ここには分類されている。

(20160522)

② CCL: 輸出規制される貨物、技術、ソフトウェアが記載されている、EARのPart 774 Supplement 1にある輸出規制品目リスト(Commerce Control List:CCL)。

 

③ ECCN: CCLに記載されている品目につけられている、規制品目番号(ECCN: Export Control Classification Number)。EAR Part774 Supplement No.1 CCLに記載。

ECCNはアルファベットと数字による5桁の組み合わせによる輸出規制品目分類番号で分類されている。この5桁の記号にはそれぞれ意味がある。

カテゴリー

グループ

規制理由

規制理由

通し番号

0 核物質、核施設、核装置 A 装置、組立品、部品 0 NS  国家安全保障(WA,NSG) 0 0

1 材料、化学物質、

  微生物、有毒物質

B 試験・検査装置、製造装置

1 MT ミサイル技術
(MTCR)
1 1
2 材料加工 C  材料

2 NP 核拡散抑止

(NSG)

2 2
3 エレクトロニクス D  ソフトウエア 

3 CB 科学・バイオ
 兵器関連拡散抑止

(AG)

3 3
4 コンピュータ E  技術情報 4 4 4

5 通信

  情報セキュリティ 

F 防衛関連役務 5 5 5
6 センサー、レーザー G 製造、生産の許可 6 6 6
7 航法装置、航空電子   7 7 7
8 海洋技術   8 8 8

9 推進システム、宇宙機器   

 

9 米国自主規制

AT: Anti-Terrorism

CC:Crime Control

RS:Regional Stability

SS: Short Supply

UN:United Nations Sanction

9 米国自主規制

9

5D002  暗号ソフトウェア

6A004  光学装置及び部分品

 

CCLの例

6A004 Optical equipment and components

License Requirements

Reason for Control: NS, AT (←規制理由はNS, AT ということがわかる。)

Control(s)

Country chart

NS applies to entire entry

NS Column 2. NSの規制レベル2 

AT applies to entire entry

AT Column 1. ATの規制レベル1 

License Requirement Notes: See §743.1 of the EAR for reporting requirements for exports

under License Exceptions.

License Exceptions許可例外として、VS,GBS,CIV,STAがあることがわかる。

LVS:$300 LVS$3000 B国群向け300ドル以下は小額許可例外

GBS:Yes for 6A004.a.1, a.2, a.4, b, d.2, and d.4 GBS: B国群向けこれらの番号なら許可例外

CIV:Yes for 6A004.a.1, a.2, a.4, b, d.2, and d.4 CIV: これらの番号の北朝鮮を除くD1国群 NS該当貨物・技術の民間エンドユーザー向け民生品は許可例外

STA: Paragraph (c)(2) of License Exception

STA may not be used to ship any commodity in 6A004.c or .d to any of the eight

destinations in §740.20(c)(2) of the EAR. 戦略的取引認可License Exception Strategic Trade Authorization:STA

 

④ CCC (Commerce Country Chart)

EAR Part 738 Supplement No. 1に記載。規制理由が横、国名が縦。

たとえば下記とおり、日本の場合NSはコラム1にしかXがない。上記6A004ではNSコラム2にXがある該当する国に輸出する場合、BISの許可が必要。 また、日本の場合ATはコラムが空欄。CCLではコラム1にXがついている国へ輸出の場合BISの許可が必要。仮にCCLに書いてあるCCCのコラムにXがあった場合でも License Exemptionsの適用可否をチェックする。

CCC Japan

コラム1 コラム2 コラム3       コラム1 コラム2               コラム1 コラム2
CB1 CB2 CB3 NP1 NP2 NP3 NS1 NS2 MT RS1 RS2 FC CC1 CC2 CC3 AT1 AT2
x           x   x x              

⑤EAR99:技術云々というレベルには至らない消費財などCCLに掲載されていないものは「EAR99」として分類される。BISのライセンスなしで輸出可能なものが多い。CCLに掲載されていないとは言え「EAR99」としてEAR対象品目ではあるので、制裁国、テロ支援国などへ輸出(再輸出)する場合には、BISの許可が必要な場合がある。

⑥ License Exceptions (Part 740) 許可例外

§ 740.3 SHIPMENTS OF LIMITED VALUE (LVS)

§ 740.4 SHIPMENTS TO COUNTRY GROUP B COUNTRIES (GBS

§ 740.5 CIVIL END USERS (CIV)

§ 740.6 TECHNOLOGY AND SOFTWARE UNDER RESTRICTION (TSR)

§ 740.7 COMPUTERS (APP)

§ 740.8 [RESERVED]

§ 740.9 TEMPORARY IMPORTS, EXPORTS,REEXPORTS, AND TRANSFERS (IN COUNTRY) (TMP)

§ 740.10 SERVICING AND REPLACEMENT OF PARTS AND EQUIPMENT (RPL)

§ 740.11 GOVERNMENTS, INTERNATIONAL ORGANIZATIONS, INTERNATIONAL INSPECTIONS

UNDER THE CHEMICAL WEAPONS CONVENTION, AND THE INTERNATIONAL SPACE STATION (GOV)

§ 740.12 GIFT PARCELS AND HUMANITARIAN DONATIONS (GFT)

§ 740.13 TECHNOLOGY AND SOFTWARE UNRESTRICTED (TSU)

§ 740.14 BAGGAGE (BAG)

§ 740.15 AIRCRAFT, VESSELS AND SPACECRAFT (AVS)

§ 740.16 ADDITIONAL PERMISSIVE REEXPORTS (APR)

§ 740.17 ENCRYPTION COMMODITIES,  SOFTWARE AND TECHNOLOGY (ENC)

§ 740.18 AGRICULTURAL COMMODITIES (AGR)

§ 740.19 CONSUMER COMMUNICATIONS DEVICES (CCD)

§ 740.20 LICENSE EXCEPTION STRATEGIC TRADE AUTHORIZATION (STA)

§ 740.21 SUPPORT FOR THE CUBAN PEOPLE (SCP)

 

(6)  一般禁止事項 GP General Prohibitions

パート736では一般禁止事項として10項目を掲げている。これらに該当する場合、EAR の適用範囲となる輸出、再輸出及びその他の行為は、産業安全保障局(BIS)から輸出許可を受けるか、許可例外(LE) が適用できない限り行うことができない。

CCLで5桁の番号(ECCN)が付されている品目についてのリスト規制

1

許可対象国向け輸出・再輸出はできない。

2

米国原産品目の組込比率がデミニミスレベルを超えた海外製 組込品の輸出・再輸出はできない。

3

米国から導入した技術に基づいて米国外で製造された「直接製品」

(=直接製品)の輸出・再輸出はできない。  

米国技術により製造された外国製品(直接製品)の規制仕向国:Country Group D:1及びE:1

CCLで5桁の番号(ECCN)が付されている品目のみならず、番号がなくEAR99と扱われるものを含むEARの全品。

4

Denial Orderで禁止されている Denied Personとの取引はできない。

 5 

禁止された用途・顧客向け輸出・再輸出はできない。

 6 

禁輸国向けの輸出・再輸出はできない。

7

拡散行為に対する米国人・企業の支援はできない。

8

経由規制国を経由した輸出・再輸出はできない。

9 

輸出許可・許可例外の条件等への違反をしてなならない。

10

違反が起きた/起きることを認識した取引をしてはならない。